いつか『アナザースカイ』に出演するときが来たとき、辿りたい場所があります。
いまのところ出演する可能性はゼロに等しいです。でも学部の頃はまったく考えていなかった留学が、いまこうして実現しているように、人生なにが起こるかわかりません。なので、一応『アナザースカイ』出演を想像しつつ…。
私は長野出身ですが、大学入学と同時に京都で一人暮らしを始めて6年間を過ごしました。ですので、京都もアナザースカイ候補としては捨てがたいです。
ただ、将来はもう一度海外渡航がしやすくなっているだろうという期待を込めて、今回は現在留学中のアメリカカリフォルニア州のアナザースカイ候補を主題にしました。
あとは、まもなく引越しを迎えるにあたり、どうしてもこの引越し前の住まいについて何か書き残しておきたいという思いがあります。PhD留学のリアリティを描くためには、どうしてもこの馬小屋コテージを避けて通ることはできません。
要するに、このページは、
引越し前の住まいであるこの馬小屋コテージでの暮らしについて、その思い出を記しておくだけ
という、とんでもない「誰得?」なページとなっています。
お時間とこころに“ゆとり”のある方々に、ゆるめに楽しんでもらえたら嬉しいです。
馬小屋か、コテージか、それとも…
具体的な思い出に入る前に、かんたんに舞台設定をしておきたいと思います。
そもそも「馬小屋コテージ」という呼び方についてなのですが、ここには、
まぁ一般的にはコテージって言うけど、馬小屋と呼ぶ方が近いかもしれないなぁ…
という、妻と私のなんとも言えない思いが込められています。
夫婦二人暮らしです。
このあとのセクションで少しずつ明らかになりますが、この「コテージ」には様々な難しさがあります。そのもろもろの難しさがここを馬小屋チックに感じさせます。
念のために強調しておきますが、馬も馬小屋もまったく馬鹿にする意図はありません、もちろん。特徴というか性質の違いという意味で、コテージよりは馬小屋に近いかなと思わせるということです。
一方で、この馬小屋コテージ。一瞬だけですが、大学になりかけたことがあります。
それは、ここに引越してまもなくの頃。
おばあ「最近どう?学校のことはいい感じに進んでる?」
わたし「うん、めっちゃいい感じだよー」
おばあ「カレッジはどう?そっちもいい感じかい?」
(わたしの心の中)「え、カレッジ(大学)の話はさっきしたでしょ?え、デジャヴ?」
わたし「ん?ん?カレッジって言った、いま?」
おばあ「そうそう、カレッジ、カレッジ」
(わたしの心の中)「まぁ、このおばあちゃんしっかりしてるけど、たまには2回同じこと聞いちゃうときぐらいあるか」
わたし「え、あ、まぁうん、いい感じ」
おばあ「大家さんともうまくやってる?」
(わたしの心の中)「あーーーーーーーー、わかった、カレッジ(college)じゃなくてコテージ(cottage)か!!!!!!なんだ、そういうことか、発音ってやっぱむっずいなぁ。そういえばカッテージチーズってコテージチーズ(cottage cheese)だもんね、そーだよね!!」
わたし「あ、コテージか、ソーリーソーリー。大家さんめっちゃ優しくて、それもいい感じ」
以後、雑談が適当に続く…
まぁ単純に私の英語力が不十分だったというだけなんですが、こんな感じでわれらが馬小屋コテージはカレッジになったことがあります。
私の住んでいる地域だと、母音に挟まれた“t”がよく「ラ行」に近い音で発音されます。
馬小屋・コテージ・大学というバラエティ豊かな3つの顔が印象的な住まいでした。
平和なオークランド
立地はオークランド。そう、全米ワーストクラスの治安の悪さで有名なあのカリフォルニアのオークランドです。
とはいえ、最近はテック企業がこぞってやってくるシリコンバレーからの影響で、オークランドも安全な方向へ様変わりしてきたようです。貧富の差の拡大という別の深刻な問題がありますが、全体の治安としては改善傾向にあると聞いています。
そして、私たち夫婦が住んでいたのは、オークランドの中でも安全だと言われている閑静な住宅地域。実際に事件に巻き込まれたとか、危ない思いをしたとかいうことは一度もありません。
まぁホームレスはたくさんいますが、なんか明るくて平和的なホームレスが多いです笑。
オークランドのコーヒーブランド
「Peerless Coffee & Tea」
ピアレスコーヒー&ティー
最近は地元の誇り的なものも出てきたみたいで、リベラル/サステイナブル/ダイバーシティとかそういう感じを前面に押し出しています(少なくとも都市の光と闇で言うところの光の部分では)。
もちろん、手放しで安心して過ごせるなんて日本でしかありえない環境ですが、、、
アメリカの、しかもオークランドでの暮らしということを考えると、かなり平和に過ごせたと思います。
ちなみに、私の渡米の一年後に妻が渡米する形だったので、事実上の新婚生活はここで送りました。渡米前の妻に「オークランドに住もうと思っている」と伝えるときには、めちゃくちゃ気を遣いました笑。
本当に“ひとつ屋根の下”
そして、新婚生活舞台である馬小屋コテージの物理的構造についていえば、なんと文字通り「ひとつ屋根の下」です。
部屋数は風呂トイレ用の部屋を含めて2。書き間違いではありません。「含めて」ですし「2」です。
ぶっちゃけて言ってしまえば、大人が二人で住むような大きさと間取りではないです。
ただ、いわゆるこのベイエリアは全米一の地価だそうで、私のように経済的にそれほど余裕のない学生の場合「普通は」などと言ってはいられないのが実情です。西海岸留学を検討されている方は要注意です。
とにかく、良くも悪くもひとつ屋根の下。
やや揉めをしたときも逃げることはできないので、バチバチで向き合いまくりの新婚生活でした。
リスとアリとオポッサムと
リス・アリ・オポッサムという愉快な野生動物たちと過ごしたのも良い思い出です。
リスはYouTubeで、オポッサムはブログで以前紹介したことがありましたので、ここでは省いちゃいます。
さて、上のリスとオポッサムは室内に入ってきたことはないのですが、アリはインドア派。
雨が降るとガンガン家の中に入ってくるんですよね。10月~11月に始まって数ヶ月続くカリフォルニアの雨季。その時期には、ちょいデカめのアリたちが家の中に出現します。
あまりの鬱陶しさに耐えかねて“Terro”というアリ対策グッズで迎え撃ち、数ヶ月かけて撃退に追い込んだのももう昔の話。
いわゆる毒エサです。せっせと巣に持ち帰った餌が毒で、巣ごと壊滅に追い込むという凶悪なやつ。
トラップの口が全然うまく切れないので、仕方なくこぼさないようにハサミで切るのがオススメです。
ちなみに、これを置くと、置く以前と比較にならない量のアリがやってきます笑。恐ろしいですが、基本行列ルートを行き来するだけなので、ルートを外れて冒険しているアリさえキッチリ処理しておけばそんなに広がることはないです。
光景的にも最初はかなりキツイかもしれないですが、そのうち慣れます。とにかく寝室まで入り込まれて寝込みを襲われないように気を配っておくのが大事!!
われらが馬小屋コテージでは6本入りパック1箱では足りず、結果的に3ヶ月ぐらいかけて10本程度消費して勝利した感じです。「お、だいぶ少なくなってきた。勝ったかな?」と思っても、新しいトラップを置くと再襲来。これを何度か繰り返してやっと決着なので注意。あとは仕上げにパテかなんかで穴を埋めると、さらに安心でした。
日本ではなかなか経験できない生き物との遭遇で“Welcome to America”なコテージ生活でした。
清潔を求めて
カンの良い方はお気づきかもしれませんが、上のアリ対策“Terro”写真の背景は床です。
つまり、なぜか赤茶色の石タイルみたいな床の上で生活していました。「郷に入っては郷に従え」とは言いますが、もともと神経質な私はどうしても外履きのまま過ごすことに耐えられず、基本サンダル暮らし。
いや、神経質でなくてもこれはふつうに難題です笑。文化的に当たり前にキツイので、妻も当然サンダル履いてました。ちなみに掃除は掃除機とかの次元ではないので、昔ながらのほうきスタイル。
やはり日本の清潔意識は世界の最先端を走っています。このことは洗濯やバストイレ関係のことでも痛感しました。
以前ピーツコーヒーを紹介したページでも書きましたが、この国では洗濯は週1回とか当たり前みたいです。
おかげで私たちも一人暮らし時代から続けていたほぼ毎日洗濯から卒業し、エコにプチ貢献できたかもしれません。清潔さを確保するためにとりあえず下着を大量に持つという技も身につけました。
バスタオルとか連続で使うの普通にめっちゃ嫌ですけど。
お風呂については有名な話ですが、浴槽に浸かる文化ではありません。当然、トイレとシャワーは同じ部屋。
とにかく換気をしておきたいので、使っていないときはドアを開け放つ生き方なんかも経験できました(この時は事実上この馬小屋コテージは仕切りなしの1部屋なので、なんか一周回って流行りの生き方だったかもしれません)。
日本にいたときよりも、格段にタフな心身になりました。
ミニマリストではないけれど
私たち夫婦はミニマリストではありません。むしろ、その逆。
友だちと遊ぶとき、いつもやたらと荷物が多い人いるじゃないですか??そのそれぞれの性別の代表が結婚したような夫婦です。
にもかかわらず、スペースと予算の関係で、自分たちなりにはかなりモノの少ない生活を送れたと思います。
ベッドはクイーン1台。
テレビを持っていないのはもちろんですが、まさかのストウブで米を炊く習慣まで身につき、なんかもう逆に“良い暮らし”みたいになっちゃいました。
挙げ句の果てには、留学で来ているのに勉強デスクすら無い始末。
設置用の管がどこにも通っていないのになぜか部屋に最初から置いてあった食洗機を机代わりにし、明るいオークランドのホームレスが持っているよりもボロいパイプ椅子の背もたれ上面のほっそい部分に座って勉強していました(普通に座ると高さが合わないので)。
あのサムソナイトのパイプ椅子。最初はパクリ品か別会社かと思っていましたが、どうやらリアルアンティーク品っぽいです。
ぜんぜん勉強しない小学生の段階からちゃんとした机と椅子を買ってくれた両親に、ほんと感謝だなって思えました。
もちろん日本での生活に戻ったら、絶対にテレビも炊飯器も掃除機も買うし、なんならトーストにしか使えない場所取り家電代表格のトースターだって買っちゃいます。
心優しきバァ&スーさん
思い出というオブラートに包みながら、この馬小屋コテージの難しさを書きなぐってきたわけですが、大家さんは非の打ち所なし、パーフェクトでした。
詳細はよくわからないですが、教育関係のコンサルティングだかなんだかをしているというバァ(おばあさんで、たぶん70歳前後)。
本当は〇〇バァと親しみを込めて呼んでいますが、〇〇部分は本名になってしまうので、ここではちょっときつく聞こえてしまうのを覚悟でバァとだけしておきたいと思います。
挨拶とかは明るくしてくれるけど、干渉はまったくしてこない、すごく良い距離感。ネットの不具合だの停電だの困ったことが起きたときには親切かつ迅速に対応してくれました(停電の小話は以下の別ページで書いたことがあります)。
あとは時々やってきて庭で遊んでいる孫たちが、もうほんっとにめちゃくちゃかわいい。舌足らずな英語とクリクリの目とダンゴムシを一生懸命に探す健気さ。そこに丁寧に付き合っているバァも本当に人格者。「将来はあんな祖父母になりたいねー」と妻と常々言い合っているぐらいです。
それに加えて、癒しと刺激をくれる大家さんのコンパニオン・アニマル(伴侶動物)のスーさん。嘘のようにガタイの良い、黒いコーギーです。
名前に「スー」要素はまったくないのですが、親しみを込めてギリシア神話みたいに「△△ス」(ヘパイストス、デュオニソス、プロメテウスみたいな)と呼んでいたところ、最終的に「ス」だけ残ってスーさんとなりました。
庭をトイレ代わりに使っているので、しばしばハエがぶんぶんしていますが、その点以外はスーさんも素晴らしい犬格者。ぜんぜん吠えないし、バァの言うことよく聞くし、しかもなんかめっちゃ嬉しそうに戯れてくれるし。
引越しにまつわって大きな心残りとなってしまうことのひとつは、このバァ&スーさんという素晴らしいペアとのお別れです。
バァのおかげでアメリカ人に対してすごく良い印象を持てるようになったので、この国で日本人の印象を決めてしまう二人として、夫婦共々そのつもりでの言動をいっそう心がけるようになりました。
また会う日まで
というわけで、引越しを機会に、かつての住まいである馬小屋コテージの思い出を振り返ってみました。
どのような形であれ、貴重な経験をたっぷりと得ることができた暮らしだったかなと思います。
もしも今田さんに「あなたにとって、この馬小屋コテージとは?」と聞かれたら何と応えようか。しばらく考えているのですが、なかなか良い案が浮かんできません。もし何か思いついたら、その折には、ここに追記しておきます。
なにはともあれ、バァとスーさんには長く元気でいてもらいたいものです。
いつか、また会う日まで。
コメント