このページでは、現在アメリカで文系PhD学生をしている筆者が、
アメリカの大学院留学に挑戦するなら、予め知っておく・覚悟しておくと良いんじゃないかなー
と思う事柄を簡単にまとめてみています。
アメリカに大学院留学するという一見きらびやかな挑戦―その裏にある雑草魂的部分。
地味だけど大事なそんなところに、意識的にスポットライトを当ててみたいと思います。
あと、一応このページは出願とか具体的な手続きに至る前段階的な位置づけで、出願書類の話や院試にまつわるテクニカルなことについては別のページにまとめてあります。ご興味ありましたら、それらのページにも目を通していただけたら嬉しいです!!
全体の構造としては以下のイメージです。
(本ページ)
自分の心の準備
周囲の理解・後押し

出願必要書類
各書類の文脈

情報収集
コネ作り
資金調達
大学院留学するという覚悟を決める
「えー、わざわざこんなこと書く?」といった感じも否めませんが、
何よりもまず、「大学院留学に挑戦する」という強い意思を自分の中で固める
ってほんとうに大切だと思います。もちろん出願先にもよります。
とはいえ、あえて日本から学位留学を狙うほどの水準にある大学院であれば、合格率は極めて低いはずです。そして合格後の学生生活もいろんな面でハードだと思います。
この険しい道を行くのに、「まぁなんとなく大学院留学してみるかな」程度の姿勢では厳しいものがあります。

※もっとも、中途半端な取り組みでは入試をクリアできない場合がほとんどなので、入学後の心配は要らないですし、また仮に、中途半端な姿勢でも受かってしまうような才能と運の持ち主であれば、入学後もそれほど苦労しないかもしれません笑。
出願にかかるコストがヤバい
詳しいことは前回の【基礎編】(コチラです)に記しておきましたが、
出願にあたっては、膨大な時間とエネルギーを英語語学学習と書類作成に注ぎ込まなければなりません。
TOEFLなどのテスト対策も含めてスクールに通う場合は、数十万~百万円単位でお金もかかります……OMG。
私の場合は学生でしたので、スクールに通う資金はありませんでした。そのハンデ分も上乗せとなり、やはり時間と労力はかなり必要でした。語学としての英語学習には、ならすと、だいたい一日平均2~3時間を1年半ぐらいをかけた感じだと思います。めっちゃ個人差あると思います。
ホームステイ、ワーホリ、あるいは最近芸能界でも流行っているような1年ぐらいをメドにしながら英語「を」学びに行く語学留学といった海外生活とはワケが違います。
英語「で」世界トップレベルの学問に参画しにいくのが、学位留学と言っても過言ではないと思います(ホームステイ、ワーホリ、語学留学も、異文化に触れて見識を広めるという意味では、もちろん価値のある活動だと思います)。
大学生の場合、言語学専攻で特に英語を専門領域としているという方以外は、もちろん自身の専門の研究とは別で英語の勉強時間を確保しなければなりません。
大学院留学を視野に入れるような方であれば、専門の勉強もかなり高度で骨が折れるはずです。後になって「大学出ても意味なかった」などと寂しい振り返りをしなきゃいけない大学生とは違うはず。バイト時間だって制限しないといけないですし、苦労がほんと多いです…
なんか偉そうですが…私自身は留学を学部卒業後、院に入ってから決めたので、そんなにめちゃくちゃ勉強した学部生生活ではなかったです笑。
仕事をなさっている方であれば、仕事のかたわらで英語学習に費やす時間を設けるということです。休職や離職も選択肢としてありますが、当然、その分の稼ぎが無くなります。
たまにあるみたいですが、「あ、うちの会社は英語学習のためにスクール代も出してくれるし、休みもくれるよ」という方々はめちゃくちゃ恵まれていますので、ぜひそのありがたみを感じながら頑張ってほしいです。
そして、ここで踏まえておくべきなのは、
そういった身体的・経済的コストは、仮に不合格を突きつけられたとしても返ってこない
ということです。
もちろん、出願に向けて努力して身に着けた経験とスキルは残ります。一生の財産になると思います。不合格というネガティブな発想に支配されずに、「合格イメージ」を持ち続けるということも大事です。
それでも、万が一の話。
結果として不合格が出てきてしまっても、捧げた犠牲は取り戻せないのが現実。トライする大胆さと一緒に、そうした冷静な自覚も大事かなと個人的には思います。
アメリカの大学院は授業料がヤバい
そしてですね、
基本的にアメリカの大学院の授業料は、日本のそれよりも激しく高いです。
参考までに、私の場合は年間で日本人年収の中央値ぐらい授業料でもっていかれます。これにプラスして家賃と高額な保険料(年間50万円強)。留学中は原則として就労しないわけですから、とんでもない話です。
幸いにも努力が実って、入試に合格できた!!!!!
となった場合、その授業料をかけるだけの価値をしっかりと見据えておきたいところです(スーパーリッチな方でない限り)。
ただ、理系であればわりと奨学金が充実していたり、私立であれば学校が資金を潤沢に持っていたりするようで、意外と自腹での負担は少ないというケースもあるみたいです。
もちろん異国での生活ですし、留学中の身体的、精神的苦労もそれなりにあります。
そういったことも全部ひっくるめて、少なくとも当事者である自分の中では、大学院留学することの意義を腑に落としておきたいですね。
追い込まれたときにそれを思って頑張れる、そんな大事な原動力になってくれます。
と、ここまでごちゃごちゃ言いましたが、まとめると、
アメリカの大学院留学には、強靭なメンタル or 図太さが求められる
ということを、経験的に感じ取っています(なんか自分でも嫌になるぐらい偉そうに言っていますが、私自身も今現在留学中のペーペーです笑)。
身近でない「大学院留学」に対して家族の理解を得る
多くの日本人にとって、大学院留学というのは身近ではありません。MBAですら、一般には得体のしれないもの感が強いです。
大学院への学位留学となると、もうハテナで溢れます。
さっきちょこっと書いたとおり、めっちゃ大変なのに、、、
周囲からは「え、そんなことして意味あるの?」の雰囲気をめちゃくちゃ出される可能性があります笑。
ただ、周囲の協力、特に家族の理解や支援なくして、大学院留学を成功させるのはめちゃくちゃ厳しいと思います。
学生身分への理解
幸いなことに、私の両親も、私の妻も、妻の両親も、学問が大事ということに深い理解があり、始めから私の留学を応援してくれています。
しかし、「勉強はもういいから、早く就職してほしい」という思いを明確に自分に伝えてくるご家族をお持ちの方々もいらっしゃると思います。
「そうした家族の反対を押し切って留学」という状況となると、きっとすごく大変です。
自分の中で留学の意思と意義をハッキリとさせたうえで、ぜひ素直に慎重に家族と相談して、それらを理解してもらうよう努力することをオススメします。
将来を共にする配偶者がいる場合は当然のこととして、独身であっても自分の親との関係だってとっても大切です。
留学の意義が伝わっていない場合の親の立場といったら、切ないものがあります。
自分の子供がまだ学生であることにネガティブな思いを抱くだけでなく、周囲からの目線もそういうネガティブなものに解釈してしまって肩身の狭い思いをしなければいけないかもしれません。
仮にこうした心理的な問題なんて気にしない場合であるとしても、自分にとっての実利的な面での不便だって出てきます。
ひょっとしたら経済的支援を依頼せざるをえない状況にならないこともないですし、自分が渡米している間に日本から書類を取り寄せるやら何やらで、家族に協力をお願いすることも多々あります。
そして最後にもうひとつ言うとすれば、
自分の家族すら説得できないのであれば、学問の世界で不特定多数の他者を説得することは難しいのではないかと思います。
研究者の大事な仕事というのは、自分の検証結果の正確さと意義を論理的に説明して、世の中にわかってもらい、活用してもらうことのはず。自分の知識欲を満たすだけの取り組みではないはずです。
要するに、これは自分の研究を説得力ある形で提示できるかどうかという話でもあります。
なので、このことをないがしろにすると、
- いわゆる志願理由書(SOP)が即ゴミ箱行きになってしまったり
- 留学後に書きまくる論文・レポート・書籍が毒にも薬にもならないものになってしまったり
- 奨学金を獲得しにくかったり
といった様々なしっぺ返しをくらう可能性があります。
当然、ひとによって様々な事情と環境があるわけですが、少なくとも家族ぐらいには学生であること(研究をすること)の重要性を理解してもらったうえでの挑戦をオススメしたいです。
自分はもちろん配偶者も就労不可
アメリカ留学の場合ですが、
原則として留学生自身(F1ビザ所有者)はもちろん、その配偶者(F2ビザ所有者)も働くことができません。
ほんとうにもう、アメリカにお金を落とすだけです笑。
一応「原則として」というのは、「中には違法で働くひともいるらしい」ということだけではなく、「留学生自身(F1ビザ所有者)は学内であれば一定時間働いて良い」という点も含んでいます。
とはいえ、、、
違法就労は当たり前にやめたほうが良いです笑。バレるとかなりヤバいらしく、二度とアメリカに足を踏み入れられなくなったりするらしいです。
なんか自分探しとかで謎の渡米をしちゃったりする場合は、そういう珍しい経験をして生涯にわたって武勇伝として語りたいとかいう哀しい思考があったりするのかもしれません。
でも、少なくとも(まあもちろん、誰であってもですが)、大学院留学生にはまったくオススメしません。せっかくいろんな苦労を経て留学を実現させたわけです。そんなことですべてが水の泡になるなんていうのは、どう考えたってもったいないです。
また、学内バイトも学費や生活費の大半をカバーできるほどではないらしいです。
つまり、
配偶者や子供など家族帯同での留学を考えている場合、それ相応の貯金か、どこかからの経済的援助を受ける必要があります。
ここで、もし仮に両親から経済的援助を頼みたいという状況になった場合、やはり大学院留学の意義を理解してもらえているかどうかというのは、とっても重要なポイントになります。

帯同家族ってどう過ごすの?問題の発生
そして、この「働けない」問題、家族帯同で留学する場合、実は経済的な問題に限らないんですよね。
アメリカの大学院留学を狙う層となると、社会人経験済みで家庭があるという方も珍しくないのではないかと思います。
自分が授業に行っている間、そして帰宅後に山積みの課題をこなしている間、帯同家族がどのように過ごすかというのは、地味に悩ましい問題です。
私の場合、妻が一緒に渡米してくれています。
“アメリカで暮らす妻”というステータスなわけですが、、、
企業の海外転勤で駐在している方々とは違い、留学生夫婦である私たちはめちゃくちゃ経済的に厳しいので、優雅なカフェタイムとかショッピング的なアクティビティは実質、封印状態です

もちろん、たまにはちゃんとこういうのを食べます
それに、留学生自身は学校で友人ができたりしますが、帯同家族の場合は知り合いほぼほぼゼロです。
まぁ「マウント取られてイヤ」とかそういう面倒事に巻き込まれないという点では良いかもしれないです。
それでも、どこかで働くということができないですし、留学生本人の勉強を邪魔することもできないので、
帯同家族は自分自身で何かしらやることを見つけないと、せっかく渡米してもあまり意味の感じられない生活を送る羽目になってしまいます。
渡米直後は「自由な時間あるって最高!」みたいに思うかもしれないですが、しばらくすると、何も無い環境で時間だけ与えられてもやっぱりキツイって感じになるようです。
私の妻は最近、ウクレレやら動画編集やらイラストやら(あと、あつ森)でそこそこに取り組む何かがあるわけですが、一時期我が家では「ほんとどうする?」的な感じの深刻な場面を経験しました笑。
家族や大事なひとに自分の留学に付いてきてもらいたいという場合は、このあたりのことにも少しは考えを巡らせておくと安心かなと思います。私自身は軽く考えていたことを反省しています笑。
大学院留学は厳しくて温かい
なんだかちょっと脈絡に欠くダラッとした文章になってしまいましたが、端的に言っちゃえば、
アメリカの大学院留学を目指すなら、わりと固めな覚悟と周囲の理解を得られるような姿勢が大事だと思う
というのが伝えたいことです。
MBAにしろ、PhDにしろ、アメリカの大学院に留学するとなると、華々しいエリート街道が頭に浮かぶかもしれません。
ですが、実際にその内側を覗いてみると、「自分だけの力でここまできた」みたいな勘違いをしている学生はいません。まぁ少なくとも、まだ私自身はそんな学生に出会ったことがありません(SNS上で見かけるひととかは除いて)。私自身も留学生活を通して、妻を始めとする周囲の存在の温かさとありがたみを改めて痛感しています。
そんな感じの泥臭さというか、雑草魂というか、人間らしさというか、厳しく温かいリアリティがあるということも、ぜひ出願の際に心に留めておいていただたら嬉しいです。
たった一人であっても、そんな部分に目を向けてくれるような留学志望の読者の方がいらっしゃったなら、このページの面目躍如が果たされる気がします。


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